北京 2012


一年四か月ぶりの北京。飛行機を降りてムダに広い空港ゲート内を延々と歩かされる。そして入国審査官が作り笑顔で「国際的な」対応をしてくれる。審査官の印象が良かったか悪かったかという、入国者が押す評価ボタンの存在が彼らの口角を上げ、目尻を下げさせる。タクシーを拾って市内に向かう。どこか薄く黄色がかった空気に緑が映え、真夏の北京はきれいだと思う。



初日にして北京動物園に行ってみる。炎天下、チケットを買うために大行列の最後尾に並んでいると、黒いベンツに乗ってきた金持ちファミリーが係員に迎えられ、チケットレスで悠々と別ゲートから入っていくのを見た。ようやくチケットを買って中に入ると、巨大なパンダ舎にも大行列ができている。蒸し風呂のような建物に入って人をかき分けていくと、だだっ広いフィールドの遠くにパンダがぽつねんと向こうを向いてうずくまっている。たった一頭。夏休みに遠路はるばる来て行列を作っている子どもたちに、思う存分パンダを見せてあげようなどというサービス精神は存在しない。すべては園側の事情で動いている。
動物園ひとつとっても、中国の性質や体制が凝縮されていておもしろい。