Lee Friedlander (リー・フリードランダー) @ Paris

細かいところを忘れないうちに書いておこうと思う。

パリのマレ地区で開催されたLa Quatrieme Image Photo Festival 2014 で展示中、平日の午後3時ごろに上品な老夫婦が僕のブースにやってきた。15分〜20分はブースにいたと思う。背が高くて手が長いそのおじいちゃんは一枚一枚じっくり写真見てくれてステートメントもじっくり読んで僕の方を振り返り「すごくいい写真だ。プロセスも素晴らしい」などとめちゃくちゃ褒めてくれた。僕はあらためて自分の写真について説明した。アメリカ人だというおじいちゃんは「僕も80年代後半に上野に行って写真を撮ったことがある」とか、機材の話は一切していないのに「僕も君と同じハッセルブラッドを使っているよ。SWCだけどね。今朝もSWCで写真を撮ったよ」などと言っていた。写真だけを見て機材を簡単に言い当てるのはかなりの目利きの人だなと一瞬思ったのを覚えている。しばし歓談した最後に、お連れのとても上品な女性(たぶん奥さんだと思う)が、「彼が後であなたに連絡するかもしれないから名刺をください」と言う。僕が、80年代に撮った上野の写真が見てみたいですと言ったので、親切にメールででも送ってくれるのかな、と思った。1€で売っていたポストカードを「どうぞこれでよければ」と言って渡した。別れてしばらくしてから、ふと考えた。さっさのおじいちゃん…あれ?アメリカ人?80歳ぐらい?80年代に上野?SWC?あれ?ひ、ひょっとして?そういえばあの感じ…まさか…?いそいでiPadで調べたら、やっぱりめちゃくちゃ似てる…いや間違いない。そう、Lee Friedlander!

気がついたのは遅かった。会場内を探し回り外にも出てみたものの、彼の姿はなかった。ああ、何たることだ。なぜあの場で気がつかなかったんだろう。いや気がつかなくて良かったともいえるか。わかったが最後、きっと緊張して会話どころではなくなったかもしれない。写真で見るFriedlanderはどこかハードで威圧的な印象だが、実際の彼はジェントルで落ち着いた印象だった。ああ、それにしても…いろいろと失礼なこと言っちゃったような気もするし、別れ際には無邪気にバイバイと手を振っちゃった。連絡先を聞かれたからと言って、まさかFriedlanderが僕にコンタクトしてくるとは思えない。ああもう一度どこかで会って話しがしたい。

いろいろと調べてみると、Friedlanderは数週間前から隣のベルギーブリュッセルで個展をやっているようだし、パリでは、親交の深かったGarry Winograndの回顧展(見に行ったら、Friedlanderが撮ったWinograndの写真やWinograndが撮ったFriedlanderの写真も展示されていた。それほど2人は近い存在だった)が開かれ、その後はParis Photoも控えている。この時期Friedlanderがパリに滞在しているのは自然だ。その後一週間、僕はパリの町を歩きながら無意識のうちにあの大きくて手の長い後ろ姿を探していたように思う。そして帰国前日、僕はポンピドーセンターでFriedlanderの"Self Portraits"を買った。いつかサインしてもらいたいなあ。


http://delaneybondi.tumblr.com/friedlanderより、Lee Friedlanderのポートレート


そしてyoutubeで見つけたLee Friedlander。40秒あたりから。上の写真と違ってソフトな印象。