レビューサンタフェ (Review Santa Fe) 2013 メモ1

アメリカニューメキシコ州のサンタフェで行われたレビューサンタフェ(Review Santa Fe)に参加してきた。


Review Santa Feは全米の美術館、ギャラリー、出版などのエキスパートが、あらかじめ選抜された100人の写真家の作品を見る場。Alec Sothがブレークするきっかけとなったアメリカの登竜門的レビュー。
http://www.visitcenter.org/reviews/overview/review_santa_fe_2013


欧米のギャラリーや美術館では基本的に作品の持ち込みはできない。そういう意味では、写真家にとってこうしたレビューは本当に貴重な場。


事前に審査があるため、参加者のレベルはさすがに高いと感じた。年齢も幅広くて20歳台〜60歳台ぐらいまで。学校で教えてる先生もいれば、既に写真集を何冊も出している人もいる。今回日本人参加者は7名で、アメリカ人に次いで多い。中国や韓国ではまだあまりポピュラーになっていない様子。


2013年6月6〜9日の4日間。参加者100名、レビュアー44名。1対1で行われるレビュー以外にも講演会などのイベントがあるけど、ここではレビューに限定してメモしておきます。



カッコいいことに、なんと教会の中でレビューが行われる。レビュー開始時間になると正面の大きな扉がガチャンと閉められて、外には静寂が訪れる。なんかコンクラーベを思い出した。レビュー時間は20分、テーブルをはさんで1対1。この時間が微妙で、気に入ってもらえれば短く感じるし、もし好みでなければ長く感じる。時間が余ってしまった場合に備えてこちらからの質問も用意しておいた方がいい。


参加者は、あらかじめ依頼して抽選で決まった9人のレビュアーに見てもらう。僕の場合は美術館3、ギャラリー3、出版2、コンサル1。それ以外に全レビュアーが回遊閲覧するオープンポートフォリオレビューというのもある。気に入ってもらえる人に当たるには、やはり数打てば当たるということもあるので、このオープンレビューの場もとても大事。



20分のレビューの進め方はだいたいこんな感じ。
自己紹介→アメリカで何がしたいかを話す→写真を見せる→相手の目線のペースに合わせて自分が写真をめくっていく(簡単な説明を加えながら)→レビュアーからの質問や意見に答えつつ、その中で自分のPRしたいことや強みなどを入れこむ→最後まで写真を見せる。
と、ここまでででだいたい15分ぐらいかかる。この時点ですでに反応がいいか悪いかがわかっているので、残り5分の使い方はそれによりけり。残り5分と残り1分の時点で、ボランティアの人が各テーブルを回って教えてくれる。20分を越えての商談はできない。


美術館キュレーターはやっぱり研究者的で、対応もジェントルなんだけど、具体的な話しに発展しにくい傾向。一人で物事を決めるシステムになっていないからかもしれない。


その点ギャラリーは、売れるか売れないか、好きか嫌いかという判断で商売的、YES-NOもハッキリしていてわかりやすい。その場で他のギャラリーを紹介してくれたりして仕事のスピードも早い感じ。


写真家専門のマーケティングコンサルという商売があって、作品を見て、それを具体的にどのような形にして誰と組んで誰に向けていけばいいかをサジェッションしてくれる。僕をレビューしてくれたコンサルは、紙に色々書いてくれて、最後はA4裏表にびっちりになった。


日本でよくある抽象的な質問は一切なかった。また、whyではじまるような質問もない。僕の場合、今回出た主な質問は、
・どこで撮ってるの?
・どうやって人に声をかける?
・この写真と日本の社会との結びつきは?
・hikikomoriって何?
・他はどんな作品を撮ってる?
・エディションはいくつ?価格はいくら?
等など。


レビュアーの、so nice!とかexcellent!とか、how much?とかsure!といった言葉に一喜一憂しちゃいけない。アメリカでは日常的に使われる感嘆表現なので、やはり具体的な仕事の話しにならなければあまり意味がない。


どこで個展をやったとか、賞をとったとか、ギャラリーの所属とかキャリアには全く興味ない感じ(極端な話し、人格も)。多分そうしたものは、具体的に仕事を進める時の一つの参考にしかすぎないんだろうと思う。


銀塩であることにアドバンテージを感じるシーンもあり。やっぱりモノクロバライタがいいというレビュアーや、銀塩を中心にコレクションしているというNPOのレビュアーもいた。ちなみに100人の写真家のうち、銀塩は10人もいなかった。さらにモノクロとなると3〜4人。しかもみんな日本人。


レビュー自体は「お見合い」的な要素もあって、その場で具体的に仕事の詳細が決定することはあまりない(いや、人によってはあったのかもしれないけど・・・)。レビュアーは一気に20〜30人のポートフォリオを見るので、すべてが終わったあとにこちらの作品が頭に大きく残っていなくてはならない。やはりレビュー後のフォローがとても大事だと思う。僕はこれからコロラドでの展示、収蔵交渉、NYのギャラリーでの取扱い交渉がはじまる。それと、photo eye booksで写真集を取扱ってくれることが決まった。


レビューに臨むスタンスは、「10人からの賞賛を得るより、たった1人との具体的な仕事を狙う」だと思う。


僕のような写真でもアメリカで受け入れられることがわかったし、逆に改善していかなくちゃ進まないであろう課題もクリアになった。


アメリカと日本で写真に求められることの違いとか、その他周辺に関わることや、更に細かいことはまた後日アップしようと思う。